ノンベーグラフ亭
ノンベーのためのグラフ亭(ティ)(=落書帖)、憩いの広場にようこそ。皆で楽しい場を作りましょう
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ココロとカラダを巡って
投稿者:
作家モト
投稿日:2009年 5月23日(土)09時07分44秒
靖国通り沿い、書泉グランデの並びに「本と街の案内所」があって、マスターも時々お手伝いで
詰めているとのこと。(
http://go-jimbou.info/annaijo/?page_id=34/
)
「福岡から学者風の二人連れが、浮世絵を探してるっていうんで、2,3お店を紹介してあげた
んだけど、いきなりじゃなく、もう少し、下調べもしてきて欲しいよね」「本当にいい作品は、
店頭になんか置いてないですもんね」
「演劇関係の本を探している女性に、その分野に強いお店を教えてあげたら、探していた本が
あった、ってすごく喜ばれてね」「そういう経験ができるって、うらやましいなぁ、、、」
以上、今週もグレローニュースは、USO800Khzでお送りしました。
★
「腰痛放浪記 椅子がこわい」(夏樹静子 新潮文庫)という本があります。
作家の夏樹を突然激烈な腰痛が襲います。姿勢をどう変えようとも去らぬ痛みで不眠の日々。あ
りとあらゆる医学的検査と治療を試み、最後は、神仏にすがるところまでいくのですが、原因は
不明のまま、数年経っても一向に改善は進みません。
そして行き着いたのが心療内科。医師の診立てによると、猛烈な仕事振りにネを上げた夏樹の潜
在意識が、いわば反乱を起こして、腰痛という信号を送っているのだと言う。とにかく仕事を減
らす、中断するしか治療法はないらしい。仕事がいっぱいある、とにかく痛みを取ってくれと駄
々をこねる夏樹と医師との壮絶な戦いが始まります。
最後は、本人も仕事を徐々に整理し、症状は快方にむかうことになります。
それにしても不思議なのは、心とカラダの関係。
「病は気から」という言葉があります。様々なストレスが、肉体的変調を引き起こすことはよく
知られていますし、自身の経験でも、ふと「気」の緩んだ時などに、思わず風邪を引いてしまう
なんてのがあります。
逆に、「気」が病の予防、治療に効果を発揮することもあるわけで、「笑い」がカラダの抵抗
力、免疫力を高め、場合によっては癌予防にも効果あり、との研究結果を聞いたことがありま
す。そういえば、「生きがい療法」なんてのもありましたっけ。
人間の肉体は、所詮部品を寄せ集めたいわば機械のようなものであり、生命の本質も生化学反応
である、とする今までのパラダイム(枠組み)に対して、心とカラダの関係も「含めて」、人間
をもっとホリスティック(包括的)に捉え、予防、自然治癒に重点を置いた医学のありようを探
っていく、、、、、、、、、
マスターから借りた「ホリスティック・パラダイム 生命のダイナミクス」(日本ホリスティッ
ク医学協会編 柏樹社(1990年))でいろんな学者が、様々な切り口で語っているホリステ
ィック医学というものを、私流に(大胆かつ勝手に)解釈すると、どうもそういうことらしい。
中でも、ラリー・ドッシー博士の「医学におけるこころの問題」が分かりやすく、興味を引きま
した。
ある研究によると、心臓発作の原因としては、「職場、仕事での満足感の欠如」が、喫煙、高コ
レステロール、高血圧などより危険度が高いのだという。
また、感情を自分の中に封じ込めてしまうタイプの人ほど癌にかかりやすいという別の研究結果
もあるという。全身がイボでおおわれるという難治性の遺伝病が、催眠療法で改善した症例の記
述もある。
マスターに返しておきましたので、興味のある方は、是非ご一読ください。
<ミニコーナー>
「国宝 阿修羅展」(東京国立博物館平成館 6月7日(日)まで)に愛妻と行ってきました。
八部衆像(全8体)、十大弟子像(現存6体)の国宝14点も合わせて展示されるとあって、お
っとり刀で駆けつけた次第。
いや〜、阿修羅の憂いを含んだ表情にうっとりと見とれてしまいました。(昔、遠足で行って、
見てる筈ですが、小学生に良さが分かる訳はないですよね)
当時の仏師たちは、「仏像」を作る気は毛頭なく、「人間像」を作りたかったんだろうな、との
思いがひしひし伝わってきました。
1時間程度の行列覚悟でお出かけください。画像は、阿修羅像(同博物館のHPより)
謎のオブジェ情報
投稿者:
作家モト
投稿日:2009年 5月16日(土)15時33分54秒
編集済
「都営地下鉄 円錐 マーク」で検索したらわかりました。
同じような疑問を持つヒトが、いるんですねぇ。
マスターの指摘どおり、石原某の児戯、わがまま、ということのようです。
http://www.excite.co.jp/News/bit/00091086658279.html/
上記サイトによると、名前は、「くるくるシンボル」らしいですが、どうみても「くるくるパーのシンボル」。
都営のHPにも情報はなく、目立つために作ったサインのことを、おおっぴらに出来ないとは
滑稽ですねぇ。
最後のちょっといい話 Part5
投稿者:
作家モト
投稿日:2009年 5月16日(土)09時13分17秒
「ちょっとここでスキップしてみてください」某氏から突然いわれた。
それらしきことを、モタモタとやってみると、「ヒトはスキップするとき、幸せな顔に
なるんですよ。だから気分が落ち込んだ時など、スキップという行動から入ることで、
気持ちを切り替える効果があるみたいですよ」
某氏が毎日スキップをしているかどうかは、訊き忘れた。
以上、今週もグレローニュースは、USO800Khzでお送りしました。
★
硬い話題が続いたようですので、久しぶりに「最後のちょっといい話」(戸板康二 文
春文庫 1994年)の第5弾で肩のコリをほぐしてもらおうと思います。どうぞお
楽しみ下さい。
渡辺美佐子は仲間から、ミチャコと呼ばれて来た。時には、メチャコだの、ムチャコ
といわれたりもした。その美佐子が俳優座の養成所にいて、芝居をすることになった
が、舞台稽古の時、客席で見ている千田是也が、大声で叫んだ。「アチャコ!」
中村伸郎はガンではないかと疑って癌研に入院した。その時、もうだめだと思ったの
で遺言を書いておいたが、幸い無事退院したあと、それを読み返したら、じつにくだ
らないことが書いてあった。「ピアノの上の九谷の壺は高価なものだから、人にはやら
ずに、売ったほうがよろしい」
浅香光代が去年の秋大阪で西城秀樹と共演、同じホテルに泊まっていた。エレベータ
ーで上がって先に降りる時、西城から「一人で寝られますか」と突然いわれた。夢見
心地で部屋に帰ったが翌日そわそわしながら、「きのうあんなこといったけど、寝られ
ないといったら、どうするつもりだったの」といったら、西城がニッコリ笑って、「睡
眠薬をあげようと思ったんです」
初場所で19歳の貴花田が優勝した。厚生省から相撲協会に電話がはいって、「祝杯は
お酒でなく」といって来たそうだ。ご親切な話である。
古今亭志ん生が大昔、いわゆる「なめくじ長屋」にいたころ、本麻の蚊帳というのを
「三十円の品物ですが即金なら十円に致します」という口上で売りに来た。キチンと
畳んであるのをつい確かめもせず、長火鉢の引き出しから紙幣を渡してしまった。さ
て開いたら、蚊帳の切れっぱしを畳み、赤い縁と環をつけて、見せかけだけのイカサ
マ。しまったと口惜しがったが、ふと気がついた。「うちに十円札があるはずはないん
だ。あれは一枚五厘で売っていたおもちゃの紙幣だった」
三木のり平はセリフをおぼえるのがへたでいろいろ苦心した。ある時、茶碗の内側に
セリフを書いておいたら、いたずら好きな共演者が、ほんとうに飯をよそってしまっ
たので、急いでそれをかっこんで、セリフを辛うじて読んだという話もあるが、なん
ともおかしいのは、幽霊のセリフを手の平に書きとめていた時の話。舞台で「うらめ
しや」と両手を垂れたので、何も読めなかったという。
<ミニコーナー>
最近は、女性の鉄道ファン(鉄ちゃん、鉄子)が増えているらしい。酒井順子さんも
「女子と鉄道」(光文社)で、そのことをカミングアウトしています。写真は、その表
紙絵。黄昏時の淡い色調と座席にちょこんと座っているウサギがかわいい。デザイン
は、有名な佐藤可士和、さすがです。
アドレス訂正
投稿者:
作家モト
投稿日:2009年 5月 9日(土)18時09分1秒
編集済
岩崎邸庭園のアドレスが、変更になっていました。次の通りです。
http://www.tokyo-park.or.jp/park/format/info035.html/
追伸:アドレスは、これで間違いない筈ですが、どういうわけかリンクできません。
その場合は、「岩崎邸庭園」で検索してみてください。
静かなブームー幸田文(あや)
投稿者:
作家モト
投稿日:2009年 5月 9日(土)08時38分12秒
「あんた、どじょう食べられるかい?」いきなり、iさんから訊かれた。「柳川鍋とかを食べたこ
とはありますねぇ」「おれはダメだね。あの眼を見ると食えないんだ」「意外と繊細なんです
ねぇ」「その代わり、小さい頃には、ザリガニを良く食べたよ」「う~ん、そっちのほうはどう
も、、、、、」「ザザ虫とか、蜂の子なんかも、昔は、貴重なタンパク源でしたよねぇ、私はサ
ソリのから揚げを食べたことがありますけど、、、、」
オジさんたちの食べ物話は、そのまま自分史、生活史になっているようです。
以上、今週もグレローニュースは、USO800Khzでお送りしました。
★
最近、ちょっとした幸田文(あや)ブームの感があります。
父露伴の厳しいしつけを描いた「幸田文しつけ帖」(平凡社)が出ました。
雑巾がけでは、そもそも水をどう扱うかから、厳しいしつけが始まる。はたきかけでは、まず
はたきの作り方から徹底的にしこまれる。とにかく露伴のしつけは半端ではありません。
その前に読んだ「幸田文のマッチ箱」(村松友視 河出文庫)は、編集者と作家との交流を通し
て、幸田の生き様に迫る力作です。同書でも盛んに引用されている幸田の自伝「みそっかす」
(岩波文庫)に興味をおぼえ、読んでみました。
「明治三十七年九月一日、暴風雨(あらし)のさなかに私が生まれたという。命名の書にはただ
文とだけ。第一子は母体を離れぬうちに空しくなったが、これは男子であったそうな。位牌には
夢幻童子とあった。第二子は女、歌という。父は三子に男を欲していたという。そこへ私が出て
来たのである。
恵まれた子を喜ばぬということは勿論ありえないけれど、男子を待ち望んだ心には当て外れの淋
しさがあったのだろう。産褥のまくらもとから立ちあがる父と入れかわりに、葛湯をすすめに
行った下婢おもとは、母がほろほろと涙を流しているのを見、「女だって好い児になれ、女だっ
て好い児になれ」とくりかえしているのを聞いたという。」
父露伴との相克、家族を襲う過酷な運命までをも暗示する陰鬱な書き出しです。
自伝といいながら、幸田の筆は、常に冷静、時に冷酷なほどに、まわりの情景、状況の細かな描
写に向けられます。心の内をぐずぐず掘り返して、読み手の感傷を誘うなどという下手な手法と
は無縁です。
幸田7歳の折、最愛の母を失う直前の描写です。
「そういう日々のある暮れがた、夕やけの井戸端で私と弟は喧嘩して、競って泣いた。
とめてはなかなかあらわれなかった。歌うように泣いていると、台所の油障子から女中が顔だけ
出して、「奥さまがお呼びです」といった。たちまち泣くのをやめて、先を争った。廊下でオバ
公に行きあって、「こーれ、静かに」と捉えれたが振りもぎって、唐紙引きあけ飛びこむと、中
はもう夜であった。台ランプが薄葉の笠を著(き)て、ほの明るくともっていた。
子供は天の啓示に敏感であった。何事かはわからないが、なにか異常をさとった。立ったまま見
ると、母さんはいつもと違っていた。髪をへんなふうにぎゅっと結えて、赤い顔だった。」
引用が長くなりましたが、ある程度の年齢になって心に沁みる、本当に分かる文章というものが
ある、と感じます。じっくり読んで欲しい一冊です。
<ミニコーナー>
上野の池之端に、旧岩崎邸庭園があります。ご存知三菱財閥の岩崎家本邸として建て
られたもので、今は東京都が管理する公園として、有料公開(一般400円)されて
います。洋館、和館のほか、ビリヤード専用の別棟は、中に入ることもできます。ゆったりした
庭で、ゆったりした時間を過ごすのはどうですか。
詳しくは、
http://www.tokyo-park.or.jp/park/format/outline035.html/
「明治」という国のかたち
投稿者:
作家モト
投稿日:2009年 5月 2日(土)09時12分18秒
「深夜食堂の第4巻まだ置いてないの?またカアちゃんがモタモタ読んでんだろっ」
「iさんの気に入っていただいたのは嬉しいんですが、第4巻は、この夏に出るんで
す。 もう少しお待ちください。」「本当か?よく調べといてよ。」「ハイ、ハイ」
以上、今週もグレローニュースは、USO800Khzでお送りしました。
★
グレローニュースの流れで、マンガを紹介しようと思います。
「坊ちゃんの時代」という作品です。
原作が先にあって、それをマンガ化したものではなく、作家の関川夏央とマンガ家の
谷口ジローが最初からコラボして、マンガとして作り上げた作品で、1986年から、
実に12年がかりで完成しています。(双葉社アクションコミックス版と双葉文庫版
があります。(いずれも全5巻))
で、内容ですが、、、、、
第1巻の主人公は、夏目漱石、第2巻の主人公は、森鴎外です。
二人を取り巻くいろんな人物、エピソードが描かれますが、やや消化不良気味。「個人
主義」を切り口に、西欧的「個」の確立を目指す漱石。一方、「明治国家」という枠組
みの中での「個」のあり方を模索する鴎外。
近代国家と家、個人といった重いテーマに正面から向き合った二人の文豪の思想、生
き様を、マンガというストーリー中心の手法だけで描き切るのはやはり無理があるか
なあ、と感じます。
登場人物が生き生きと動き出し、ストーリーに引き込まれるのは、第3巻から。
主人公は、「国家」とか「個」からも解き放たれた根っからの自由人石川啄木。歌の才
能はありながら、とにかく金にだらしがない。朝日新聞社の校正係という職を得なが
ら、借金、前借りを重ね、紅灯の巷に散財してしまう生活。
小説の方は、遅々として進まない中、自堕落な自分への嫌悪はすぐ歌になる。「歌は簡
単に口をついて出るのに、、、、、、」との独白が哀しくもおかしい。この巻だけでも、
一読の価値あり、と思います。
第4巻では、国家と対峙する人間たちが登場します。幸徳秋水と菅野須賀子を中心に
「大逆事件」がテーマ。
荒畑寒村を巻き込んだ男女の愛憎劇を縦糸横糸に計画発覚までが描かれます。襲撃計
画そのものには、終始消極的で、湯河原での文筆生活に入ることで、一連の運動と距
離を置いていた秋水の前にまで大きく立ちはだかる国という存在。その輪郭が明らか
になった歴史の転換点と言えます。
最終の第5巻では、再び漱石が登場。有名な「修善寺の大患」が描かれます。
胃潰瘍の治療のため、医師のすすめで、この温泉地で療養していた漱石を大量の吐血
が襲います。「30分間死んだ」ともいわれる危機的な状況の中で、漱石が「見たで
あろう」幻想を、作者の想像力で思い切り羽ばたかせています。
医師の必死の手当で、奇跡的に危機を脱した彼ですが、その後も病を抱えつつ、執筆
活動を続け、大正5年に亡くなります。明治という時代とともに生き、苦悩した知識
人の死でした。
<ミニコーナー>
「坊ちゃんの時代」を読むきっかけにもなった「神々の山嶺(いただき)」(夢枕獏原
作 谷口ジロー画(全5巻))をお店に置いています。谷口の精緻で迫力に富む描写に
是非触れてみてください。
「カラマーゾフ」完読のためのヒント
投稿者:
作家モト
投稿日:2009年 4月25日(土)09時18分19秒
先週のこと。「はい、これっ。いいんだなあ、これが」挨拶抜きで、S野さんがいきなり真っ赤
なジャケットのCDをカウンターに置いた。聞けば、60年代後半から70年代初めに活動した
人気ロックグループ「ジェファーソン・エアプレイン」から二人が抜けて、結成したHOT T
UNAというグループだという。
ちょっとフォークのテイストも入ったブルースなんだが、これがなかなかシブい。お店のCDコ
レクションにまた新たなジャンルが加わって楽しみです。
以上、今週もグレローニュースは、USO800Khzでお送りしました。
★
世界文学の最高峰とされるドストエフスキーの「カラマーゾフの兄弟」。
中学時代の挫折を経て、光文社古典新訳文庫(亀井郁夫訳 全5巻)で何とか読みおえました。
マスターからは、「なら、書評でも」といわれましたが、とても手に負えないし、内容を理解し
きっているわけでもないので、「完読のためのヒント集」という軽いノリでお送りします。
1.完読へのモチベーション
「カラマーゾフの兄弟友の会」(確かそんなような名前でした)があって、かの村上春樹が
主宰しています。入会資格は、この作品を読破したことだけ。入会金、特典などはありませ
ん。とまれ達成感を共有できる、というのは、大きな動機付けにはなりますね。
2.とりあえず憶えておく名前
登場人物の名前のややこしさで挫折しないよう主要な登場人物の名前は憶えておきましょう
。フョードル(一家の家長)、ドミートリー(長男、愛称はミーチャ(以下同じ))、イヴ
ァン(次男:ワーニャ)、アレクセイ(三男:アリョーシャ)をまず押さえましょう。フョ
ードルの隠し子とされるスメルジャコフ、一家と深く関わる女性陣としてアグラフェーナ
(グルーシェンカ)とカチェリーナ(カーチャ)、そしてアレクセイの修道院のゾシマ長老
も重要な役どころです。
3.主人公はスメルジャコフ?
作品の冒頭、主人公は三男アレクセイであると書かれてあります。淫蕩、奔放な一家を、神
の愛で救おうと努力するストイックな青年で、全編を通じて、重要な役割を演じます。一方
、中程から存在感を増してくるのが、スメルジャコフ。
一家の下男として働きながら、フョードルと卑しい身分の女性との間にできた隠し子として
の出自に暗い情念の火を燃やし続ける。父親殺しの事件が起こってからは、彼を軸にストー
リーが展開する趣さえあります。スメルジャコフの言動に注目です。
4.いろんな読み方
(1)推理小説として
ストーリーだけを単純に追えば、父親殺しの犯人を巡る推理小説、という見方もできま
す。金を巡る十分な動機があり、事件当夜、父親の自宅に忍びこんだと言う事実、父親
への憎しみなど、長男ドミトリーを取り巻く状況は極めて不利であり、事実彼は、犯人
として起訴、裁判へと話は進行します。当夜は、癲癇の発作で気を失っていたと主張す
るスメルジャコフに疑いの目を向けるドミトリーとの対決は緊張感をはらんだまま、判
決前日のスメルジャコフの自殺、そして判決へと物語は一気に劇的な山場へと突き進み
ます。
(2)壮大な思想、哲学、宗教小説として
まあ、これが一番まともな見方、読み方でしょうけど、、、、、、、、
ジェイムズ・ジョイスの「ユリシーズ」は、わずか一日で起きた出来事と主人公の思念
の流れを追ったとてつもない小説(らしい)ですが、「カラマーゾフ」における時間の
流れも実にゆるやか。文庫本一冊分が、一日分ということも。
神及び神の存在について、愛について、人間についての議論が延々と、あらゆる場面で
、様々な登場人物の間で行われます。聖人と崇められたゾシマ長老の死後2日にして、
腐臭が漂い始め、信者の間に動揺が広がるエピソード、
そして最大のエピソードである父親殺しの事件も、これらの議論に付き合わせるための
作者の仕掛けではないか、などと考えたりもしてしまいます。
物事をあまり突き詰めて考えず、まあまあで済ましがちな日本人には、はっきり言って
「しんどい」小説ではあります。
とはいえ、世界最高峰といわれる小説がどんなものか、アタマと心のスタミナに自信のある方は
、是非チャレンジしてみてください。
<ミニコーナー>
「目白御殿」と呼ばれた故田中角栄元首相の自宅の一部(もとの庭の部分約2000平米)を含
む一帯が、「目白台運動公園」として整備され、最近オープンしました。
左写真の駐車場の奥が「御殿」。右は、多目的運動広場といいながら、どうみても野球専用グラ
ウンド。「具体的利用目的」にこだわる日本的風景です。
超絶的な才能と強運
投稿者:
作家モト
投稿日:2009年 4月18日(土)09時10分42秒
某氏が癒しを求めて来店。
職場で面白くないことがあるのは、ほぼ恒例ながら、その日は特にストレスが大きか
ったよう。オジさんの経験譚やら、得意のジャンルの話題を振ってみたりと、慰撫に
努めたのだが、酔いは深まるばかりで、手に負えない。駅まで送りましたが、無事に
帰れたのかな?以上、今週もグレローニュースは、ぎりぎりに飛び込んできた美味し
いネタを中心に、USO800Khzでお送りしました。
★
「仏教の原典を求めて、長安から天竺(インド)を目指す」(玄奘三蔵)、「初期の仏教
に一番近いチベット仏教の経典を求めて、厳しい鎖国政策をひくチベットへ潜入する」
(河口慧海)―夢枕獏の考える「奇想家」とは、国などという小さな枠を飛び越えた
とんでもない発想を、自ら実行に移した人のことを指すらしい。
「夢枕獏の奇想家列伝」(夢枕獏 文春新書)では、そんな8人の奇想家たちの事跡、
エピソードが簡潔に紹介され、飽かせません。
とりわけ私の興味を引き付けて止まないのが「空海」という人物。
超絶的な才能というものは、超絶的な強運までをも呼び込む力があるのかなあ、など
と思わざるを得ません。
遣唐使という国家プロジェクトの一員に、実績もさだかでない31歳の若者が参加で
きたことのいきさつがそもそも不明で、不思議。
4艘のうち2艘を嵐で失うという苦難の果てに、大陸南部の寂れた漁村に漂着し、途
方にくれる一行を救ったのが空海の文才。地方長官あてに嘆願文書をしたため、無事
長安まで行き着きます。
どこで身につけたのか、天才的な語学力を発揮した空海(書は当然として、会話が完
璧に出来たというのだからこれも謎)は、密教最高の指導者である恵果の知遇を得て、
わずか3ヶ月で、全てを伝授され、恵果の後継者となります。
何十年も修行、勉学に励むあまたの高僧、高弟を押しのけて、小国からきたぽっと出
の若者が、密教の奥義の全てをさらって行ったのです。全てを伝授し終えた恵果は、
その3ヵ月後に入定します。空海の強運ぶり、天才は尋常ではありません。
あとは帰国するだけですが、空海の身分は、留学生(るがくしょう)といって、20
年の滞唐が義務付けられていました。が、そこは空海のこと、得意の文才で皇帝に訴
え、2年の留学を終えた最澄を迎へに来た船にまんまと乗り込むことに成功します。
その後、30年間、遣唐使の派遣は途絶えてしまいますので、まさに千載一遇のチャ
ンスをものにしたことになります。ほんとにすごいの一言。
その後の事跡も含めて、史的側面に興味のある人には、「空海の風景」(司馬遼太郎
中公文庫 上下巻)が、そして、伝奇的要素が好きな向きには、「沙門空海唐の国にて
鬼と宴す」(夢枕獏 トクマ・ノベルズ 全4巻)がお奨め。
<ミニコーナー>
中近東の歴史的遺物を専門に展示している「中近東文化センター」(三鷹市)をご紹介
します。常設展示場では、地勢的にも、時間的にも壮大な中近東を代表する文物が整
然と展示され、5月6日(水)まで、企画展「ヘレニズムの華 ペルガモンとシルク
ロード展」を開催中。
小体な庭を眺めながら、無料のお茶をゆったり楽しむ至福の時間が過ごせます。
詳しくは、
http://www.meccj.or.jp/
下は、グリフォン環状飾板(同HPから)。
痛快な本
投稿者:
作家モト
投稿日:2009年 4月10日(金)19時46分43秒
都合により、早めのアップになります。
某日、新しいお客さんが来店。ふらっと一人で気軽に立ち寄れる店を探していた、とのこ
とで、雰囲気も気に入っていただき、常連さんになっていただけそう。
趣味は、クラシック、会社を完全リタイアした現在は、公的資格で社会に貢献する活動に
従事、とお店のコンセプトにもぴったり。これからも是非ご贔屓に。
以上、今週もグレローニュースは、USO800Khzでお送りしました。
★
面白い、楽しい、ためになる、知的興奮を誘う、などいい本を評する言葉はいろいろあり
ますが、久しぶりに「痛快な」本に出会いました。
「俳句 四合目からの出発」(阿部ショウ山(ショウは、竹冠に肖) 講談社学術文庫)
がそれです。俳句の本なんていうと、シンキ臭そうですが、これが実に痛快、壮快なので
す。
著者は、句誌「好日」の主宰者。句作では、あまり名を残していないが、理論家、批評家
として、その世界ではうるさがられ、独特の存在感を示した人のようです。
初心者の句15万を収集、整理し、初心者が落ち入りがちな誤り、勘違いなどを豊富な実
作をもとに、一刀両断、思いっきりツッコミを入れまくっています。
カンナはいつも「燃え」、「一つ」だけ枝に残った柿は決まって「夕陽」に照らされ、妻
は「若く」、母は「小さい」??こんな決まり文句、紋切り型と手を切らなければ俳句の
山の四合目から上には行けず、麓をウロウロするだけ、との著者の主張は明解。
また、無駄をそぎ落とし、言葉を究極まで切り詰めるのが、句作の要諦だとして、いかに
無駄な言葉が多いか、の実例が示される。(カッコ内が、著者の考える無駄な言葉)
(ひっそりと)(風)(も)凪い(だる)村の春
山蘭に春暁の雨(冷えて降る)
(吹き果てし)梢に(寒し)冬の月
カンナ(草)しをれ(て寂し)(秋の暮)
白鳥の首(長々と)春立てり
(春近し)(草の)芽(そこに)(萌えて来し)
なんと最後の句は、「芽」だけになってしまいました。逆に言えば、「芽」という言葉だ
けで、カッコ内のイメージは想起されているわけで、それ以上の表現を持ち込まない限り
、新鮮な感興、感動を呼ばない、というわけです。(実際のところ、これが、実に難しい
わけですが、、、、、)
このほかにも「馬車馬俳句」、「蛇足俳句」、「古着俳句」、「ナルシス俳句」、「サッ
カリン俳句」、「久米仙俳句」、「説明俳句」、「慶祝俳句」など、著者命名のユニーク
な分類のもと、大家も含めた作品が次々と俎上に乗せられ、飽かせない。
されば「いい句」とはどういう句か、という実例が少ない恨みはあるが、学術文庫という
地味な分野で、84年の初版から、06年現在で30数版も重ねていることをもってして
も、名著と断言できる。句作に進むつもりは毛頭ありませんが、存分に堪能しました。
ミニコーナー
以前紹介したCNN DAILY SNAPSHOTから。
上野公園で花見を楽しむ猫です。日本人(と猫)の花見好きは、今やすっかりグローバル
になったみたいです。
こちらこそよろしく!
投稿者:
作家モト
投稿日:2009年 4月 4日(土)18時47分28秒
過分なお礼のお言葉、恐縮です。
お会いできるのを楽しみにしています。
以上は、新着順51番目から60番目までの記事です。
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